ADOX(Germany)
ADOX
アドックスは世界で最も古い写真化学メーカのひとつ。ADOX Dr. Schleussner Fotowerke GmbHとして1860年に設立された。伝説的なフィルムであるKB14とKB17は世界初の薄層フィルムとしてADOXを内外に知らしめた。
KB14とKB17は現在でもADOX CHS25とADOX CHS50と名前を変えて生きており,35mm,120サイズ,シートフィルムとして発売されている。
1956年にはADOX初のカラーネガフィルムを登場させた。2年後にはリバーサルフィルムC15を発売した。C18は当時のADOXの最新のリバーサルカラーフィルムでカラーレイヤー3層を含む計7層の構成であった。ADOXは多くのカラー写真に関する特許を持っていたため,長い間他社との競争を避けることが出来た。ADOXのカラーカップリング技術は1911年にR.Fischerによって開発されたのである。
1920年代から1960年代までADOXはワイズバーデンでカメラを製造した。売れ筋はADOX Golf(中判カメラ)そしてPOLO(35mm)だ。GolfのレンズはWill Wetzlar製でADOXARと名付けられた。
シリーズ中のPOLOmatは内蔵露出計を装備し,またPOLOmaticは自動露出計内蔵であった。搭載レンズはPOLO1以外は全てシュナイダー製である。
歴史に残るカメラの一つとしてあげられるのが,1956年発売のフィルムマガジンを交換出来るADOX300である(ロールの途中でもマガジンを交換することによってフィルムを変えることが出来た)。
現在
ADOX Dr.Schleussner GmbHは今はなく,ADOX Fotowerke GmbHがADOXの伝統を引き継ぐ。主にバライタ印画紙,35mmフィルム,ロールフィルム,シートフィルム,処理液などを手がけている。社の目標は小規模な工場で完全なアナログ写真の製品をつくり続けることである。多品種のフィルムや印画紙をつくることが出来るのは,経費をかけずに柔軟に対応することのできるシステムのおかげである。
(ADOXのサイトにある同社の歴史より要約)
日本ではほとんどその製品が知られていないADOX。しかし上の記述にもあるようにその歴史は大変に古い。
かつての処方をそのまま引き継いでいるというCHSシリーズ。CHS25,CHS50およびCHS100がある。その処方は既に紹介したクロアチアのフォトケミカの製品efkeのシリーズにも使われている。
サイトの記述を見ると,CHSシリーズには次のような特徴がある模様。それについて筆者の考えも入れて書いてみた。
1) 非常に銀量の多い処方。それゆえリッチなグレースケールで,ハイライトとシャドウの間の階調は非常に豊か。
1980年に起こったシルバーショックで銀の価格が高騰したとき,コダックはハロゲン化銀を平板にして(それ以前は粒子の形は立方体かジャガイモのような不定形だった)単位面積当たりの銀の量を落とす技術を開発した。他のメジャーなフィルムメーカーもその技術をこぞって採用したという経緯がある。これにより今時のモノクロフィルムの多くは銀の量が古典的なフィルムに比べて遥かに少ない。
このCHSやefkeのような古典的銀リッチなフィルムが今時の平板粒子のフィルムより豊かなトーンを示すのかどうか私は良く分からないが,銀が多いフィルムというのはそれだけでリッチな気分になるものである(^^)。なお,平板粒子にするのは省銀のためだけでなく,感度対粒状比が良いなど他のメリットもあるもよう。ちなみにコダックの平板粒子はT-grain(Tabular grain),富士ではその断面の形状からΣ粒子と名付けられている。
2) 乳剤層が単層で光の拡散が少ないため,拡散の多い現代的な多層フィルムに比べ,得られる画像は非常にシャープ。
モノクロネガフィルムは階調がかなり広い。ハロゲン化銀の粒子が大きいと,表面積が大きいため弱い光を捉え(=感度が高い),小さい粒子は表面積が小さいため強い光があたって初めて感光する(=感度が低い)。つまり弱い光から強い光までを捉えるためにはフィルム中の粒子のサイズの分布をある程度広げなければならない(逆にマイクロフィルムやリスフィルムのように白と黒のon,offだけを表現するためには粒子のサイズを均一化する)。
そのために,普通は2種類程度のサイズの異なる乳剤をブレンドするか,層を分けて塗布するかするのである。多層になれば乳剤自体が厚くなり,層と層の間の光の拡散が増えて像がシャープで無くなると言う話。同じ写真性能が得られるならば,層は少ない方が良いように思う。
CHSに用いられているハロゲン化銀は,2種類の立方体粒子をブレンドして粒度分布を広げて単層で塗布されており,これがこのフィルムのシャープネスの理由だとされている。
感度25のCHS25はアンダー目の露光には比較的強いが,露光オーバーには弱い。ラチチュードも高感度フィルムに比べて狭いとある。初心者にはCHS50か100を勧めている。CHS50はCHS100に近い扱いやすさでCHS25に近い粒状性を持っているからのようだ。
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さて,もう一つADOXにはCMSという超微粒子のフィルムがある。そのCMS20の性能はどの程度のものだろうか。同社のサイトによるとなんと1mmあたりの解像度800本を超えるとある。信じがたい解像度であるが一般画像のサンプルはここで見ることができる。確かにどこまで拡大しても粒子が見えない! 今はなきコダックのテクニカルパンと同じタイプのフィルムだと思われるが,RolleiブランドのATP(アドバンストテクニカルパン)と共にこれはぜひ使ってみたくなるフィルムだ。
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